妊娠すると、それまで気にせず食べていたものが急に気になり出します。「これ、食べて大丈夫だった?」「昨日食べちゃったけど平気かな」「生ものは全部やめるべき?」「コーヒーもダメなの?」。こうした質問は、当サロンでも本当によく聞かれます。
まず、ひとつ知っておいてほしいことがあります。注意が必要とされる食品を食べたからといって、
食べた=感染した、食べた=赤ちゃんに影響が出た
ということではありません。ただ、問題になる菌や寄生虫がその食品にいたのか、実際に感染したのか、どのくらい摂取したのかなどを、あとから完全に確認できないこともあります。そのため、「絶対に大丈夫」とも簡単には言い切れません。
大事なのは、食べたあとに検索して不安になるより、なぜ気をつけるのかを先に知っておくことです。この記事では、「妊娠中はこれもダメ、あれもダメ」と禁止食品を並べるのではなく、食べる前・買う前・作る前に、どう選ぶか、どう食べればよいかを一つずつ見ていきます。避けられるリスクは減らしながら、必要以上に食事を怖がらず、自分たちで選べるようになることを目指しています。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断や治療の指示ではありません。体調に不安がある場合や、症状が出ている場合は、自己判断で様子を見ず、かかりつけの産婦人科医・助産師にご相談ください。
目次13項目
まず知っておきたい3つの考え方

注意する食品すべてに、菌や寄生虫がいるわけではありません
生肉にトキソプラズマ※1が必ずいるわけではなく、卵にサルモネラ※2、生ハムにリステリア※3が必ずいるわけでもありません。ただ、こうした菌や寄生虫は目では見えません。見た目やにおいだけでは分からないため、「付いている可能性もある」と考えて、加熱・洗浄・手洗いで感染の機会を減らします。農林水産省も、微生物は土や水、動物、人の手など身近な場所に存在し、見た目がきれいな野菜にも付着している可能性があると説明しています。
※1 トキソプラズマ:寄生虫の一種(原虫)。加熱不足の肉などを介して感染することがある。
※2 サルモネラ:卵や肉を介して感染することがある、食中毒を起こす細菌。
※3 リステリア:生ハムなど非加熱の食品を介して感染することがある、食中毒を起こす細菌。
「これを食べたら危険」と覚えるより、「目に見えないから、できる予防をしておく」と考えると分かりやすくなります。
食品によって、気をつけ方が違います
妊娠中に気をつけたい食品は、注意する理由も、気をつけ方もそれぞれ違います。
| 対応の仕方 | 該当する食品 |
|---|---|
| 原則として避ける | 飲酒/生・加熱不十分な肉/生ハム・スモークサーモンなどリステリアのリスクがある食品/生卵・加熱不十分な卵料理 |
| 食べ方を変えれば食べられる | 肉・卵は十分に加熱/一部のチーズなどは十分に加熱/野菜・果物は洗浄と衛生的な調理 |
| 量や回数を調整する | メチル水銀の多い一部の魚/カフェイン/レバーなどビタミンAの多い食品 |
食品安全委員会も、妊婦向けの情報を「避ける」「注意はするが気にしすぎない」「摂りすぎに注意する」に分けて案内しています。何もかも同じように避けるのではなく、食品ごとに合った方法で気をつければよい、ということです。
妊娠時期によって、注意のポイントが変わるものもあります
妊娠時期との関係も、食品によって違います。トキソプラズマは「初期ほど感染しやすい」というものではなく、胎児への感染率は妊娠後半になるほど上がる一方、感染した場合の重症度は妊娠初期のほうが高くなる傾向があります。ビタミンAの過剰摂取は、特に妊娠初期の3か月ごろまでが注意したい時期です。アルコールは「この時期なら安全」と確認されている時期はありません。メチル水銀※については、妊娠がわかってから魚種や量に気をつけ始めても間に合うと公的資料で説明されています。
※ メチル水銀:大きな魚に蓄積しやすい水銀の一種。
妊娠時期別 早見表

| 項目 | 初期(〜15週) | 中期(16〜27週) | 後期(28週〜) | ポイント |
|---|---|---|---|---|
| 生肉・加熱不足の肉(トキソプラズマ) | 感染率は低いが重症化しやすい | 感染率が徐々に上昇 | 感染率は最も高いが重症度は下がる傾向 | 時期を問わず十分に加熱する |
| 生ハム・非加熱チーズ(リステリア) | 注意 | 注意 | 注意 | 妊娠期間を通して一律に注意 |
| 生卵・半熟卵(サルモネラ) | 注意 | 注意 | 注意 | 妊娠期間を通して十分加熱する |
| メチル水銀の多い魚 | 気づいた時点から注意でよい | 引き続き量・頻度に注意 | 引き続き量・頻度に注意 | 胎盤が完成するのは4か月ごろ。それ以前を気にしすぎなくてよい |
| アルコール | 避ける | 避ける | 避ける | 「この時期だけ避ければよい」という基準はない |
| カフェイン | 摂りすぎに注意 | 摂りすぎに注意 | 摂りすぎに注意 | 1日の合計量(目安200〜300mg)で管理する |
| レバー等ビタミンA | 特に注意(〜3か月ごろ) | 引き続き摂りすぎに注意 | 引き続き摂りすぎに注意 | 過剰摂取の影響は特に妊娠初期で指摘されている |
生肉・加熱不足の肉

生肉や加熱が不十分な肉で気をつけたいもののひとつが、トキソプラズマです。健康な大人は感染しても無症状や軽症で済むことがありますが、妊娠中に初めて感染すると胎児にも感染することがあります。胎児感染が起きた場合には、流産・死産のほか、水頭症※1、脳内石灰化※2、眼への影響につながることがあります。肉ではトキソプラズマだけでなく、牛肉の腸管出血性大腸菌※3、豚肉のE型肝炎ウイルス※4、鶏肉のカンピロバクター※5にも気をつけます。
「お肉が赤ちゃんに悪い」という話ではありません。
注意したいのは、加熱不足の肉を通じて感染する可能性を減らすことです。トキソプラズマは、妊娠初期は胎児へ感染する割合が比較的低い一方、感染した場合は重症になりやすく、妊娠後半になるほど胎児への感染率は高くなります。「初期を過ぎたから生肉は大丈夫」ということではありません。
※1 水頭症:脳に水がたまる状態。
※2 脳内石灰化:脳にカルシウムが沈着すること。
※3 腸管出血性大腸菌:O157などを含む、重い食中毒を起こす細菌。
※4 E型肝炎ウイルス:生や加熱不足の肉を介して感染することがある肝炎の一種。
※5 カンピロバクター:鶏肉に多く、下痢や発熱を起こす食中毒菌。
日常の食事でも、次のような場面で起こり得ます。
- ハンバーグを切ったら中心が赤い
- 焼肉がまだ半生
- 唐揚げの中心がピンク
- 焼き鳥の中心まで火が通っていない
- しゃぶしゃぶの肉に赤い部分がある
- レアステーキ、家庭で作った加熱不足のローストビーフ
加熱の目安は、食品の中心が75℃で1分以上です。鶏肉についても農林水産省が同じ基準を示しています。表面が焼けているだけでなく、厚みのある部分や中心まで火が通っているかを見ます。少し赤みが残っているときは、中心まで火が通るよう追加で加熱します。
焼肉では、生肉用のトングで焼き上がった肉を取ると、生肉についていた微生物が焼いた肉にもう一度付くことがあります。「生肉用」と「食べる用」でトングや箸を分ける、生肉を置いた皿に焼いた肉を戻さない。この2つを意識するだけでも予防につながります。
パパと焼肉をするときなら、最初に「こっちが生肉用トング、こっちが食べる用」と決めてしまえば、難しいことではありません。

生ハム・スモークサーモン・ナチュラルチーズ

生ハムやスモークサーモンなどで気をつけたいのがリステリア菌です。リステリアは、冷蔵庫のような4℃以下でも増えることがあります。妊娠中に感染すると、母体の症状が軽くても、早産・流産や胎児への影響につながることがあります。そのため、「冷蔵庫に入れていたから大丈夫」とは考えず、食品の種類や食べ方を見て選びます。
まず覚えておきたいのは、生ハム、スモークサーモン、加熱していない一部のナチュラルチーズの3つです。
パテなども対象になりますが、日本の普段の食生活では、まずは生ハム、スモークサーモン、加熱していない一部のナチュラルチーズを覚えておくと実用的です。
チーズは、「チーズだから全部ダメ」ではありません。プロセスチーズは製造時に加熱殺菌されています。ナチュラルチーズでも、包装後に加熱殺菌されて「加熱済み」と表示されている商品があります。種類と加熱の有無を見て選び、分かりにくいときは、ピザやグラタンなど十分に加熱された料理で食べる方法もあります。
卵

卵は、しっかり火を通せば食べられます。気をつけたいのは、生卵や加熱が不十分な卵です。厚生労働省も、妊娠中は生卵を避け、できるだけ十分に加熱した卵料理を食べるよう案内しています。
避けたほうがよいもの
:卵かけご飯、すき焼きにつける生卵、温泉卵、半熟ゆで卵、黄身が流れる半熟目玉焼き、とろとろのスクランブルエッグ、中が半熟のオムレツ、卵が十分固まっていない親子丼・カツ丼、生卵を使う自家製マヨネーズや手作りティラミス
食べてよいもの
:固ゆで卵、しっかり焼いた目玉焼き、十分火を通した卵焼きやオムレツ、十分加熱したスクランブルエッグ
卵料理を全部やめる必要はなく、加熱状態で選ぶ、という考え方です。
茶碗蒸しやプリンのように、見た目が柔らかくても調理の過程で十分に加熱されているものがあります。「柔らかい=生」とは限りません。加熱方法が分からない商品や料理は、表示を見たり、お店で確認したりして選びます。
魚

魚は、妊娠中にも取り入れたい食品です。良質なたんぱく質やDHA・EPA※、ミネラルを含み、食品安全委員会も妊娠中の食生活に取り入れることを勧めています。魚について考えるときは、「生で食べることによる食中毒」と「メチル水銀」を分けると分かりやすくなります。
※ DHA・EPA:魚に多く含まれる良質な脂肪酸。
生食(刺身・寿司)
刺身や寿司などの生の魚介類では、腸炎ビブリオ※1、ノロウイルス※2、アニサキス※3などによる食中毒に気をつけます。十分に加熱すれば、こうしたリスクは下げられます。食品安全委員会も寿司や刺身を一律に禁止しているわけではないため、「お寿司は全部ダメ」ではなく、生食による食中毒リスクをどこまで避けるかを考えて選ぶ、という整理です。できるだけリスクを下げたいときは、加熱されたネタを選べます。
※1 腸炎ビブリオ:海水にいる食中毒菌。
※2 ノロウイルス:冬に流行しやすい感染性胃腸炎の原因ウイルス。
※3 アニサキス:魚介類に潜む寄生虫。
メチル水銀

大型魚の一部は、食物連鎖を通じてメチル水銀が蓄積しやすくなります。胎児は神経系が発達中のため、一部の魚を大量・頻繁に食べ続けないよう調整します。
| 注意が必要な魚 | 目安 |
|---|---|
| クロマグロ(本マグロ)、メバチマグロ、キンメダイ、メカジキ | 1回約80gとして、週1回程度まで |
サケ、アジ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、カツオ、キハダマグロ、ビンナガマグロ、ツナ缶などは、特別な回数制限は必要とされていません。「マグロは全部控える」と覚えるのではなく、種類によって扱いが違うことを知っておくと選びやすくなります。
メチル水銀は、後に出てくるアルコールとは扱いが違います。胎盤に多くの血液が流れるようになるのは妊娠4か月ごろからです。通常の食生活であれば、妊娠に気づいた時点から魚の種類と量に気をつけ始めればよいとされています。妊娠に気づく前に食べた魚のことを、あとから何度も振り返って心配しすぎる必要はありません。
アルコール

アルコールは、ほかの食品とは少し考え方が違います。厚生労働省は、少量でも妊娠のどの時期でも影響する可能性があるとして、妊娠中は飲酒をやめるよう案内しています。CDC※も、妊娠に気づく前を含めて「この時期なら安全」と確認された時期はないとしています。そのため、「胎盤ができる前なら飲んでも大丈夫」とは言えません。 ここは、先ほどのメチル水銀とは考え方が違います。
※ CDC:アメリカの疾病予防管理センター。公衆衛生を担うアメリカの政府機関。
ここで分けて考えたいのが、「安全と確認された量がない」ことと、「一口飲んだら必ず影響する」ことです。この2つは同じ意味ではありません。CDCも、妊娠中に飲酒したすべてのケースで赤ちゃんに影響が出るわけではないとしています。ただ、どの妊娠で影響が出るかを事前に予測できず、安全と言える量の線も引けません。そのため、妊娠がわかったら飲まないことが勧められています。飲酒量や頻度が多いほど、有害な妊娠・出生結果との関連が強くなることも確認されています。
つまり、「ほんの一口でも絶対に障害が起こる」という意味ではありません。一方で、「少量なら安全」と保証できる線もありません。そのため、飲酒としては妊娠中は避ける、という判断になります。
アルコール依存症とは別の話です
アルコール依存症は、飲酒を続けることで耐性・精神依存・身体依存などが形成され、飲酒のコントロールが難しくなる状態です。一方、胎児へのアルコール曝露の問題は、「依存症でなければ起こらない」というものではありません。厚生労働省も、「胎児性アルコール・スペクトラム障害」と「アルコール依存」を別の項目として扱っています。
妊娠に気づくまで普段どおり飲んでいた、ということは珍しくありません。ただ、「妊娠判明前に飲酒した=赤ちゃんに影響がある」とは判断できません。過去の飲酒を何度も振り返るより、妊娠がわかった時点でやめ、その後の妊婦健診を続けます。飲酒量や頻度が多かったなど心配がある場合は、いつ頃まで・どのくらい・どの程度の頻度で飲んでいたかを健診で伝えてください。
みりんや料理酒まで、すべて避ける必要はありません。原文で参照している厚生労働省の「妊産婦等への食育推進に関する調査」報告書に収載された教材では、みりん・料理酒は火を通せば妊娠中・授乳中でも問題ないという扱いになっています。普通の煮物や照り焼きなど、みりんや料理酒を入れたあとにしっかり加熱する料理は、飲酒と同じ扱いにはしない、という整理です。一方、洋酒を仕上げにかける料理、アルコールをほとんど加熱しないデザート、洋酒が残ることを前提にしたお菓子などは、通常の加熱調理とは分けて考えます。なお、「数秒火を入れれば必ずアルコールが100%ゼロになる」という意味ではありません。
カフェイン

コーヒーを完全にやめる必要はなく、気をつけたいのはカフェインの摂りすぎです。日本では妊婦について独自の一律上限値は設定されていませんが、海外の公的機関では1日200〜300mg程度を目安としており、厚生労働省もこの基準を紹介しています。
カフェインは、コーヒーだけでなく、紅茶、緑茶、ウーロン茶、コーラ、エナジードリンク、チョコレートにも含まれます。「朝にコーヒーを1杯飲んだからダメ」と考えるのではなく、その日の合計量で見ていきます。カフェインを完全にゼロにする必要はありません。
レバー・ビタミンA

ビタミンAは、赤ちゃんの発育にも必要な栄養素です。気をつけたいのは、レチノール型ビタミンA※を摂りすぎることです。特に妊娠初期の3か月ごろまでに大量に摂ることは避けます。食品安全委員会も、鶏・豚レバーやビタミンA配合サプリメントの摂りすぎに注意するよう案内しています。
※ レチノール型ビタミンA:レバーなど動物性の食品に多く含まれ、摂りすぎると体に直接影響するタイプのビタミンA。
身近なものでは、焼き鳥のレバー、レバニラ、レバーペースト、ビタミンA入りサプリメント、マルチビタミンサプリなどがあります。ここも、「一度食べた=奇形が起きる」という意味ではありません。「日常的・大量に摂り続けない」という考え方です。緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンは、体内で必要な分だけビタミンAに変換されるため、避ける必要はありません。うなぎについては、現在の食品安全委員会の妊婦向け情報では、特に注意する食品として主に鶏・豚レバーとビタミンAサプリメントが示されています。そのため、「妊娠中はうなぎ禁止」とはしません。

野菜・果物と交差汚染対策

野菜や果物は、妊娠中にも取り入れたい食品です。気をつけたいのは、土や水、人の手などを通して、表面に微生物が付着していることがある点です。農林水産省は、調理や食事の前に、飲用に適した流水でしっかり洗うことを基本としています。「30秒洗えば安全」「何分つければ安全」といった時間の基準は、日本の公的資料では示されていません。
生のニンジンサラダを例にすると、次のような順番で進められます。
- 手を洗う
- 土が付いていたら、他の食品に土を付けないよう扱う
- 皮をむく前に、流水で表面の汚れを落とす
- 生で食べるなら、皮をむくという選択肢もある
- 傷んでいる部分は取り除く
- 清潔な包丁・まな板で切る
- 洗えたか不安なときは、加熱料理に切り替える
野菜では、土や傷んだ部分を取り除き、飲用可能な水で洗うことが基本です。ただし、「妊婦はニンジンの皮を必ずむかなければいけない」という日本の公的基準はありません。洗浄が基本で、皮むきはさらにリスクを減らしたいときの選択肢、加熱はさらにリスクを下げる方法、と考えます。
トマトやきゅうりは、生で食べるなら切る前に丸ごと流水で洗い、その後、清潔な包丁・まな板で切ります。レタスやキャベツは生で食べる部分に流水を当てて洗い、いちごやぶどうなどそのまま食べる果物も、見た目がきれいでも食べる前に流水で洗います。「外葉を必ず何枚捨てる」といった妊婦専用の基準はありません。カット野菜や袋入りサラダは商品によります。「洗わずそのまま食べられます」などの表示がある商品まで、妊婦だけ一律に再洗浄しなければならないという公的基準は確認されていません。商品の表示・消費期限・保存方法を確認することが基本です。
調理の順番も大切

ここは、妊婦さんだけでなくパパや家族にも知っておいてほしいところです。
農林水産省は、包丁やまな板を共用する場合、先に野菜、後から肉や魚を切るよう案内しています。鶏肉についても、生で食べる野菜や果物に触れさせないよう、調理器具を分けるか肉を最後に扱うことを勧めています。
パパがハンバーグとサラダを作るなら、次のような順番にすると分かりやすくなります。
- 最初に手を洗う
- トマトやきゅうりなどを洗う
- サラダを先に作り、清潔な皿に移す
- その後ひき肉を扱う
- 生肉を触った手で冷蔵庫や調味料、スマホなどを次々触らない
- 手を洗う
- ハンバーグを中心まで十分加熱する
- 生肉を置いた皿に、焼いたハンバーグを戻さない
「交差汚染※を防ぎましょう」と言われるだけより、この順番で見るほうが、家庭ではずっと実践しやすくなります。
※ 交差汚染:生の食品についた菌が、別の食品や調理器具を通じて移ってしまうこと。
鶏肉は水洗いしません。きれいにしようとして洗うと、水はねによって食中毒菌がシンクや周囲の食品に広がることがあるためです。農林水産省も鶏肉を洗わないよう案内しています。ドリップが気になるときは、キッチンペーパーで拭き取ります。また、生肉・生魚・卵に触れたあとは手を洗ってから、サラダなど加熱しない食品を扱います。
買ってきた肉や魚は、汁がほかの食品へ垂れないよう袋や容器に入れます。特に、そのまま食べるサラダや果物に肉汁が付かないようにします。また、冷蔵庫は「入れておけば菌が増えない場所」ではありません。特にリステリアは冷蔵温度でも増えるため、開封後は早めに食べ、期限を守ります。作り置き自体を禁止する必要はありませんが、長時間室温に置かない、清潔な容器に入れる、冷蔵する、食べるときは十分に再加熱する、という一般的な食品衛生を守ります。加熱の目安はここでも中心75℃・1分以上です。
買い物・外食で迷ったときの見分け方

スーパーで迷ったときは、「妊婦だからこれは○、これは×」と丸暗記するより、次のように見ると選びやすくなります。
- 生ハム → そのまま食べるより、避けるか加熱する
- チーズ → プロセスチーズか、ナチュラルチーズか、加熱済み表示があるか
- ハンバーグ → 家で中心まで十分加熱できるか
- 卵 → 生・半熟か、十分加熱かどうか
- 魚 → 生食のリスクと、水銀の多い魚種かどうかを分けて考える
- サラダ → 保存状態、期限、表示を確認する
- コーヒー → その一杯ではなく1日の合計を見る
- レバー → 特に妊娠初期は頻繁・大量に食べない
- アルコール → 飲酒は避けるが、通常の加熱料理のみりん・料理酒まで一律に禁止する必要はない
外食では、自分で加熱状態を確認しにくいことがあります。そんなときは「絶対に安全かどうか」を考え続けるより、よりリスクを減らせる方を選びます。たとえば、ハンバーグはよく焼いてもらう、焼肉は十分に加熱して生肉用のトングと食べる箸を分ける、卵料理は生・半熟より十分加熱されたものを選ぶ、チーズは非加熱のものよりピザやグラタンなど加熱調理された料理を選ぶ。寿司は、生食のリスクと水銀の多い魚種かどうかを分けて考えます。

食べてしまって不安になったら

まずは「食べた=何か起きた」と考えすぎない
注意が必要とされる食品を食べても、それだけで感染した、赤ちゃんに影響が出た、と決まるわけではありません。ただ、「絶対に大丈夫」とも言い切れないため、心配なときは状況を整理して相談します。次の5点が分かると、相談するときに伝えやすくなります。 ここまで分かれば、「大丈夫ですか?」だけではなく、必要な判断につなげやすくなります。
- 何を食べたか(生肉、生ハム、生卵、マグロ、レバー、アルコールなど)
- いつ食べたか(妊娠何週ごろ、何日前か)
- どのくらいの量・頻度か(一口、一人前、毎日続けていたなど)
- どんな状態だったか(生、半熟、加熱済みなど)
- 今、症状はあるか(発熱、腹痛、下痢、嘔吐、強い倦怠感など)
食品ごとの考え方
生肉:生肉を食べたからといって、トキソプラズマに感染したと決まるわけではありません。気になる場合は産科で相談し、必要に応じて抗体検査※などで確認することがあります。
※ 抗体検査:過去に感染したことがあるかを血液で調べる検査。
生ハムなどリステリアが気になる食品:食べたことだけで感染したとは判断できません。発熱など体調の変化があれば、妊娠中であることと、何を食べたかを伝えて相談してください。
生卵・半熟卵:食べたことだけでサルモネラ食中毒と決まるわけではありません。腹痛、下痢、嘔吐、発熱があれば医療機関を受診してください。
水銀の多い魚:一度、予定より多く食べたからといって、それだけで胎児への影響が決まるわけではありません。魚は、長期的な量と頻度で調整していきます。妊娠に気づいてから食べ方に注意しても心配は要らないとされています。
レバー:一度多く食べたことだけで、胎児への影響が決まるわけではありません。その後は、頻繁・大量に摂り続けないようにします。
カフェイン:ある1日の摂取量が多かったことだけで、胎児への影響を判断することはできません。その後は1日の合計量を見ながら調整します。
アルコール:妊娠に気づく前に飲んでいたからといって、胎児に影響したと判断することはできません。ただ、「安全だった」と断言することもできません。妊娠が分かった時点でやめて、妊婦健診を続けます。心配な場合は、飲んでいた時期・量・頻度を伝えてください。
下痢や嘔吐、発熱、腹痛などの症状が出ると、治療のために薬が必要になることもあり、脱水などによって母児の健康に負担がかかることもあります。だからこそ、「食べたあとに心配する」だけでなく、普段からできる範囲で予防しておくことも大切です。
まとめ
妊婦さん一人だけが気をつけるものではありません
パパが料理することもありますし、家族で外食することもあります。妊婦さんが自分だけで全部覚えて気をつけるより、家族も「なぜ気をつけるのか」を知っておくほうが、普段の生活には合っています。
「それダメなんだって!」と禁止だけを共有するのではなく、「今日はもう少し焼こう」「このトングは生肉用ね」「サラダを先に作ろう」「これは加熱して食べよう」「今日はマグロじゃなくてサーモンにしよう」と、日常の中で一緒に判断できれば十分です。
妊娠中の食事で気をつけること
全部を同じように禁止するのではなく、避けるもの、十分加熱するもの、洗って食べるもの、量や回数を調整するものに分けて考えると、普段の食事で判断しやすくなります。
妊娠中の食事は、「これはダメ」「あれもダメ」と覚えるだけだと、だんだん食べること自体が不安になってしまいます。なぜ気をつけるのかが分かれば、「これは感染を避けたいから加熱しよう」「これは量の問題だから回数を調整しよう」「これは初期に特に気をつけよう」と、自分で選びやすくなります。
目に見えない菌や寄生虫などを完全にゼロにすることはできません。でも、避ける、加熱する、洗う、移さない、量を調整する、といった方法でリスクを減らすことはできます。また、注意が必要な食品を一度食べたからといって、それだけで赤ちゃんへの影響が決まるわけでもありません。
知る目的は、食べることを怖がるためではありません。「知らずに食べて、あとから不安になる」ことを少しでも減らすためです。赤ちゃんのために避けられるリスクは減らしながら、妊婦さん自身とご家族が、普段の食事の中で無理なく選べるようになること。それが、この記事で一番伝えたいことです。
気になることがあれば
食事について迷っていることや、「自分の場合はどう考えればいい?」と気になることがあれば、来店時にお話しください。体調に不安がある場合や症状がある場合は、まずかかりつけの産婦人科へご相談ください。

最終更新日:2026年8月15日
参考にした情報源
- 食品安全委員会:お母さんになるあなたと周りの人たちへ
- 食品安全委員会:食の安全ダイヤルに寄せられた質問等Q&A(卵とサルモネラ属菌)
- 厚生労働省:家庭でできる食中毒予防の6つのポイント
- 厚生労働省:食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A
- 厚生労働省:妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項
- 農林水産省:生野菜を安全でおいしく食べるために
- 農林水産省:鶏料理を楽しむために
- 国立健康危機管理研究機構:トキソプラズマ症
- CDC:About Alcohol Use During Pregnancy
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